AI地政競争が激化する中、OpenAIはそのグローバルな展開を加速している。会社は最近、イギリスの元財務相ジョージ・オズボーン(George Osborne)氏を「OpenAI for Countries」の責任者として任命したことを発表し、「スタークエスト」と呼ばれる5000億ドル規模のインフラプロジェクト(注:ここでの「スタークエスト」はSpaceXのスターリンクとは異なる、超大規模AIインフラ計画を指す)の海外拡大を全面的に主導することとなった。

注目すべきは、この人事の動きが、今年10月に主要なライバルであるAnthropicがイギリスの元首相リシ・サナク(Rishi Sunak)氏をアドバイザーとして招聘した直後に起きたことである。これはAIの大手企業が、政治的な人脈や国同士の関係を競争の重要な要素として取り入れていることを示している。

「OpenAI for Countries」プロジェクトは今年5月に正式に開始され、主権国家が自らの制御可能なAIインフラと能力を構築するための支援を目指している。いわゆる「主権AI(sovereign AI)」の実現が目的である。このプロジェクトはもともとアメリカ本土の「スタークエスト」データセンター建設計画に由来するが、国際版では各国政府との協力に重点を置き、技術、計算資源、およびガバナンスフレームワークを提供して、地域のAI発展を支援することになっている。

情報によると、OpenAIはすでにイギリスとアラブ首長国連邦(UAE)と正式な協定を結び、現在世界50カ国以上と深い話し合いを行っている。オズボーン氏は、イギリスで政界と経済界の高層部において豊かな影響力を持ち、国際的な金融ネットワークと科技政策への長期的な関心を持っていることから、こうした高感度な政府間協力を推進する理想的な人物として見られている。

このような一連の動きは、大規模モデルの競争が単なる技術や製品の勝負から、地政学的要因、国家主権、インフラの主権を含む多面的な競争へと進化していることを示している。AIが国家戦略的資産となる中、OpenAIとAnthropicは前政界の人材を次々と引きつけ、これは単なる商業拡大ではなく、今後のグローバルなAI秩序の「地政学的ポジション」を確保するための行動でもある。

計算力が権力となる時代において、国家レベルのAI協力の入口を掌握する者は、次の世代の技術主権の境界を定める可能性がある。オズボーン氏とサナク氏の「元政界人物同士の対決」は、このグローバルなAI権力の再編の序章に過ぎないかもしれない。