AIコンペティションが深水区に入り、重要な時期に差し掛かっている中、アマゾンは組織構造の調整を通じて戦略的な決意を示しています。CEOのアンドリュー・ジャシー(Andy Jassy)氏は12月18日に全従業員に対して、AWSのベテラン幹部であるピーター・デサントイス(Peter DeSantis)氏を新設されたAI部門の責任者として任命することを発表しました。彼は、大規模モデル、自社開発チップ、量子コンピューティングの3つの主要分野におけるアマゾンの展開を全面的に統括します。
デサントイス氏はアマゾンで27年間勤務しており、そのうち8年間はAWSの上級副社長を務めました。彼は世界の約1/3のインターネットトラフィックを支えるクラウドインフラストラクチャの主な構築者の中の一人です。今回の新設されたAI部門の指揮を任じられたことから、アマゾンがAIを「クラウドの次世代進化」として捉えている戦略的論理が浮き彫りになります。
新しい組織は、アマゾンが自社開発する大規模モデル「Novaシリーズ」(re:Inventカンファレンスで発表されたNova 2を含む)、AI専用チップ(Trainium、Inferentiaなど)、および量子コンピューティングなどの先端技術の開発と協調最適化を直接担当します。ジャシー氏は内部メールで明確に述べています。「私たちはピーターのエネルギー、イノベーションサイクル、リーダーシップを解放し、これらの新分野に集中することで、モデル、チップ、クラウドソフトウェア、インフラストラクチャのエンドツーエンドの最適化を目指したいと考えています。」
この措置は、アマゾンがAIへの軍備拡張を加速している時期に重なっています:
- 先月、AWSは米政府向けのAIインフラストラクチャに500億ドルを投資することを発表しました;
- 情報によると、同社はOpenAIとの100億ドル規模の戦略的出資交渉を行っているとされています;
- 以前にはAnthropicへ80億ドルを出資し、最大の外部株主となっています。
アマゾンは自社モデルにおいてOpenAIやグーグルに遅れを取っていますが、その戦略は「技術の追従」から「エコシステムの統合」へと転換しています。クラウド、チップ、モデル、資金の4本柱を通じて、AWSを基盤とするAI企業サービスの閉環を構築しています。デサントイス氏の任命は、こうした戦略の組織的保障となります。
ジャシー氏の見解では、真のAIの優位性は単一モデルの性能ではなく、すべてのスタックにおける協働効率にあります。NovaモデルがTrainiumチップ上で動作し、AWSクラウドプラットフォームによってスケジューリングされ、量子コンピューティングの予備研究によって将来の計算力が提供されるならば、アマゾンのAIの護城河は「規模」から「システム全体の効率」へと変化するかもしれません。
デサントイス氏という「クラウドインフラのベテラン」がAI新軍を率いることで、アマゾンのAI戦略は明らかになりました。最も華麗なプレゼンテーションをするのではなく、最も安定した企業向けAIインフラストラクチャを作ることを目的としています。そして、それがBtoB市場での逆転の鍵となるかもしれません。
